Mechanismで理解する熱中症(その1)-病態-
知り合いが熱中症で運ばれました。
26歳です。自分では水分(+塩分)は摂っていたとのことですが、大量発汗、めまい、頭痛、嘔吐でQQ搬送。熱中症(おそらくⅡ度まで進行)の診断とのことでした。
幸い命に別状はありませんでしたが、
「まさか自分が熱中症になるとは思わなかった」そうです。
自分が人間である以上、
病気を知ること ⊂ 自分を知ること。
と思い、熱中症の病態について書いていきたいと思います。
※一般向けの記事です。
熱中症とは「暑熱環境における身体適応障害によって発症した状態の総称」とされています(朝倉第10版)。この総称というのがポイントであり、”片頭痛”のように一つの病気を指すのではなく、病態とその結果なりうる症状、すなわち症候群であることがわかります。
要するに、様々な症状が起こるのです。
昔は「熱疲労」や「熱射病」など症状と重症度で病名を分けていましたが、今は「熱中症」に統一され、「Ⅰ度 → Ⅲ度」までの重症度で分類することとなっています。
それでは具体的にはどのような症状があり、重症度はどのように分類されているのでしょうか?
上の図のようにⅠ度ではめまい、大量発汗、失神、筋肉痛、こむら返り(筋肉が”つる”)といった症状がでます。驚きなのは大量に発汗している時点でⅠ度の熱中症が疑われるということです。
熱中症はどんどん進行していく病気です。
Ⅱ度になると、頭痛や嘔吐、倦怠感、集中力、判断力の低下がおきます。ここで怖いのは、嘔吐や倦怠感、集中力の低下が起こると、誰かに助けを呼ぶことが難しくなる可能性があることです。助けを呼ぶ判断が低下する、助けを呼ぶにも声が出せない、などといったことから、対応が遅れる可能性があります。Ⅰ度であれば、その場の応急措置で対応可能かもしれませんが、少なくともⅡ度熱中症であれば医療機関を直ちに受診し診断、治療を受ける必要があります。
「XX高校で体育館でN人が気分不快感、嘔吐を訴え救急車ではこばれました。」というニュースが今年ありましたが、熱中症の分類としてはかなり進行していたと考えられます。みんなが体育館で整列している環境で訴えを上げにくいという心理的要因もあった可能性がありますね。
Ⅲ度では中枢神経症状や、肝・腎機能障害、横紋筋融解症、DICなど、いよいよ命に危険が及ぶ症状が出現します。早急に対応しないと死亡に至るケースがあります。
いろいろと症状を上げましたが、体内で起こっているメカニズムは以下のとおりです。
メカニズム(病態)1stステップとして、体温の上昇、発汗があります。2ndステップとして、体内の水分の枯渇、塩分(Na+)の欠乏があり、症状として現れます。
・”大量発汗”、”疲れ”を自覚した時点で熱中症は始まっている。
・体内のメカニズムは多岐にわたり、極めて重篤、死に至る可能性がある
ことを知っておくことが大切です。
メカニズムを知っていれば具体的な”予防”について考えることができます。
次回は予防について書いていこうと思います。